第86章 信長様の誘い
瞬きしたら消えちゃうんじゃないかと、何度も瞬きを試みる。
でも目の前の佐助君は消えることはなかった。
「さ、佐助君!」
この時代、外国に行ってしまったら帰ってこられないと思っていたから、また会えた喜びに胸がいっぱいになった。
蘭丸「佐助殿、おっそーい」
文句を言いながらも蘭丸君が嬉しそうに歩み寄っていった。
佐助君は町人風の装いで、背中に大きな荷物を背負っている。
記憶にあるよりも、顔立ちや体格がすっかり大人の男性になっていた。
佐助「さっき港に着いたんだ。聞き慣れた声がしたから走ってきた」
言われて見れば大きな外国船が港に入っている。
蘭丸「あの船から大分距離があるけど、聞こえたの?」
佐助「もちろん。ズットモコンビの掛け合いは大好物だからね」
蘭丸「あー、その話し方。佐助殿が帰ってきたって感じする」
「ふふ」
佐助君は相変わらず表情筋を動かさずに笑い、幸村に向き直った。
佐助「幸村、ずいぶんおじさんになってるけど、また会えて嬉しいよ」
私と蘭丸君がぷっと吹き出したのと、しかめっ面の幸村が佐助君をどつくのが同時だった。