第85章 依頼主からの文
面識がない秀頼様には秀吉さんをイメージして、緑と赤の色味を使ったちょっとおしゃれな羽織を。
政宗が『別嬪だ』というくらいだから、三の姫様には黒地に黄色、白、ピンクの小菊がたくさん咲いている華やかな生地で小袖を作った。
ところどころに家康の目と同じ翡翠色の糸を使って葵の文様を入れた。
ぱっと見ただけだと緑色のハートに見えて、可愛い。
裏地には、三成君を思わせるグレーの毛に紫色の目をした猫さんの刺繍をいれた。
(ふふ、頭におにぎり乗せちゃった。三成君にご飯をいっぱい食べさせてね、三の姫様)
三成君の子供達には紫色、黄色、翡翠色を織り交ぜた可愛い着物を縫った。
生まれたばかりだという赤ちゃんの着物を見ていると、瑞穂が赤ちゃんだった頃を思い出す。
それぞれの着物に色んな思いを込めた。
これを手に取った皆がどんな顔をするか、見られないのが残念でならない。
完成したものを衣桁にかけてぼーっと眺めていると、謙信様が部屋に入ってきた。
謙信「……できたのか」
「はい、この半年間、針仕事に集中させてもらってありがとうございました」
謙信「よい……。素晴らしい出来だな」
謙信様は着物の細部を確認して感心している。
謙信「美しい……お前の腕は一流だな。
この地に埋もれさせるのは惜しい」
「そんなに褒めないでください。照れてしまいます」
謙信様に手放しでほめられるとソワソワする。
もじもじしていると謙信様がそっと腰に手を回してきた。