第85章 依頼主からの文
「三成君にあげた武将くまたんの名前はね『なりなり』っていうの」
蘭丸「それって……」
蘭丸君が目を丸くして歩みを止めた。
「私ね、三成君が家康と戦って…後に関ヶ原の戦いって言われるんだけど、最後に晒し首になるって知っていたの。
二人の事が好きだったから、どうしてもその歴史を変えたくて二人に『大きな喧嘩をしないで』って遠回しに助言したの」
蘭丸「……」
「晒し首になったっていう歴史は変わっていないから、どうやって生き延びたのかはわからないけど、死んだことになっている三成君は名前を変える必要があったんだよ。
三成君が生きてるって、生き抜いたって、未来に居る私に知らせるために『徳生』っていう名前にしたんだと思う。
それに時継っていう人も、秀吉さんの子供だって確信が持てたよ」
こらえきれなくなって涙がこぼれた。
「嬉しいっ!三成君が生きていてくれて…。愛する人を見つけて……それに家康の家臣になってるし…」
家康の家臣になっているということは二人の関係は良好だということだ。
関ケ原の戦いを起こしたのは、三成君の名を語る別の人物なのかもしれない。
「秀頼様が生き延びるという秀吉さんの願いも叶ったんだ…」
信長様は『秀吉と三成は神をも欺くかもしれぬ』と言っていたけど、その通りになった。
徳生と名を変えた三成君と、時継と名を変えた秀吉さんによく似た秀頼様。
その二人が江戸幕府を開いた家康を支えている……。
想像してみると、やっぱり家康は迷惑そうな顔をしているんだけど、それがまた涙を誘った。