第85章 依頼主からの文
蘭丸「じゃあ徳生っていうのは、関ヶ原の戦いで死んだとされる三成様っていうこと?」
「うん、そうだと思う。徳生っていう人の特徴が三成くんそのものだもの。それに名前……」
蘭丸「名前がどうしたの?」
「徳生(とくしょう)は、読み方によっては『なりなり』になるでしょ」
蘭丸「そうだね。それがどうしたの?」
さっきから感動で胸が熱い。
これはきっと三成君からの、いや、もしかしたら家康も…二人から私へのメッセージだ。
あの二人は頭が良いから、何かをきっかけに私が未来からきた人間だって気づいたんだ。
(多分三成くんが先に気付いてくれたんだろうな)
ふんわり笑う天使の笑顔を思い出し、涙が出そうだ。
本能寺の火事で信長様を助けた場に一番に駆け付けた三成君。
二人の前で『私はこの時代の人間じゃない。500年くらい後の未来からきた』と正直に伝えた。
その後着替えを用意してくれようとした三成君に支離滅裂ともいえる受け答えをしてしまった。
未来から来たということを隠すと決めた時に、そのことが引っ掛かっていたけど三成君は何も聞いてこなかったから安心していた…。
何かをきっかけに私の秘密に気づき、私が三成君や家康に残したメッセージの重要性に気付いに違いない。
だから500年後にいる私に『生き延びた』と伝わるように、『徳生』という名前にしたに違いない。
(三成君……良かった、本当に)
思い出すのはあの雪の日に見た、輝くような笑顔。
あの笑顔を守れたんだと、感動で鼻の奥がツンと痛んだ。