第85章 依頼主からの文
行商人「いえ、聞いた感じでは実のお子さんだと思います」
??「その女、時々聞いた事のない言葉を使ったりしないか?」
行商人「時々南蛮人のような言葉をもらされることがあります」
行商人の話を聞けば聞く程、着物を見れば見る程『あの女』だと確信する。
年齢だけは納得できなかったが。
??「お前の売り物を全部買い上げるから、京には行かず、すぐ蝦夷に行ってくれないか?」
行商人「はあ、それは構いませんが…」
??「すぐとは言ったがその前にお前に頼みたいことがある。俺の城まで来てくれ」
行商人「し、城でございますかっ?あなた様はもしや…」
『城』と聞いて、行商人は眼帯をした武士に確信めいたものを感じた。
政宗「ああ、俺は伊達家17代目当主 伊達政宗だ。
ま、今は18代目に当主の座は譲っちまったがな。気楽な隠居生活だ」
行商人は予想が的中したことに恐れおののき、その場に伏した。
政宗「そんなに畏まらなくていい。
小十郎!この行商人を城に連れて行くからお前の馬に乗せてやれ!
あとここにある小物、着物類は全て買い上げた。城に行ったら支払いを頼むぞ」
白髪の家臣が短く返事をしたところで、政宗は乗ってきた馬にひらりと乗った。
小十郎「殿!まさかっ…」
政宗「その『まさか』だ。俺は一足早く帰って用意したい物がある。
先に行っているぞ、はっ!」
政宗は不敵な笑みを浮かべ馬の腹を蹴ると、あっという間に去っていった。
小十郎「あぁ、供もつけずに!おいっ、誰か殿を追いかけろ!
まったくお年を召しても殿はちっとも変わらない、はぁ」
政宗が去っていった方を見ながら小十郎はため息を吐いた。