第84章 結ぶ
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騒々しかった朝を思い出し、また、目の前で見つめ合う二人に眩暈がするようだった。
可愛くて手放せず、輿入れはさせず好きなことをして過ごせばよいと思っていた姫が、よりによって三成に惚れてしまった。
この悔しさとやるせなさはどうしたらいいんだと家康はため息をつき、城で待っている妻の顔が浮かんだ。
(なんかあいつの顔が無性に見たい)
家康の存在を忘れて見つめ合っている二人など、もう放ってさっさと城へ帰りたい。
(運命の赤い糸か…)
頑なだった三成の心を溶かしたのは三の姫だ。
(よく頑張ったな)
犬の頭をなでるように娘の頭を撫でる。
姫「ちょっ!?おやめください!乱れてしまったではないですか!」
家康「うるさい。父親の前で桃色の雰囲気出さないでくれる?
それに話はまだ終わってない。
お前と三成をくっつけるためには色々段取りが必要なんだ。お前は邪魔だから下がってろ」
姫「お邪魔しないように口をききませんのでどうぞお話しくださいませ。
私も関係する話なのに何も知らないのは嫌ですもの」
口をとがらせ、三の姫は家康の斜め後ろに場所を移ろうとした。
しかし三成がそれをやんわり止めて、自分の隣をポンポンと叩き示した。