第84章 結ぶ
家康「小さい男だな、もっと大きく物事を見なよ。
お前について死んでいった者達は何を望んでいた?
豊臣家の者達は秀頼を天下人に押し上げるためだけに働いていたのか?そうじゃないだろう」
思慮深い眼差しは伏せられ、辛そうに顔を歪めている。
三成「…彼らは戦のない世を望んでいました。誰もが安寧な生活を営めるような」
家康「彼らには不本意かもしれないけど俺が天下を統一した。
戦のない世に、俺がしなきゃいけないんだ。お前はその歯車になれ。
大きな戦が起こり大勢の人間が死んだ。誰が誰を信じようが、どちらについたとかもう変えられないものだ。
過去がのしかかっているなら、それを全部抱えて前を見続けろ。
忘れろなんて言ってない。
その気持ちがあればこそ、これからの日ノ本が平和であれと強く思うはずだ。違うか?」
家康の言葉をかみしめるように、三成はしばらく押し黙った。
何度か口を開きかけてはやめを繰り返し、最後に床に手をつき頭を下げた。
三成「不肖ながら家康様に誠心誠意お仕えいたします。必ずやお役に立ってみせましょう。
しかしそれだけで十分です。三の姫様は私にはもったいない方です」
家康「はあ、頑固もここまでくるとどうしようもないな。
いいか、これは言わないつもりだったんだけど、お前に断られたら姫は尼になると言っている。
戦のない世が訪れようとしている矢先に罪のない女が髪をおろす、それで良いのか」
三成から『え?』と驚きの声が漏れ、頭があげられた。