第84章 結ぶ
三成と家康はそれを心密かに微笑ましく眺める。
家康「間違った解釈を三成にしないでくれる?
さて、三成。話をすすめる。
お前が姫と共に生きたいと言うなら手段を考えてある」
三成「…手段ですか?」
家康「全然可愛くないけど、娘がここまで想っているなら成就させてやりたいというのが俺達夫婦の結論だ。
体制を整えている江戸幕府の中に三成を取り込む。
もちろん名前は変えてもらって別人としてだけど。
新旧の人間が入り乱れている混乱に乗じれば、そう難しい話じゃない。そこで相応の成果を上げてもらった上で姫との婚姻の話を持ち掛ける」
姫「父上様、母上様…」
家康を知っている人間ならばその物言いは、
『可愛くて仕方ない娘のために三成を取りたてる』と言っているのだとわかる。
三の姫は感激して涙している。
だが三成は固い表情で家康の提案を聞いていた。
三成「ありがたいお話ではありますが、それでは先の戦いで私について亡くなってしまった方々に申し訳ありません」
姫「しかしそれは影武者の三成様について戦われたのでしょう?
三成様自身は父と戦うつもりではなかったと先程聞きました。それなら…」
三成は首を横に振る。
三成「本人だったか、影武者だったかは関係ないのです。
石田三成について戦った結果、討ち死にしてしまったという事実が私にはどうしようもなく重たくのしかかっているのです。
彼らは私を信じて戦ってくださったのです。
病で臥せっていました、だから罪はない、とはなりません。
彼らは家康様が天下をとるのを頑なに拒んでいました。
その家康様に取りたててもらい、日ノ本一と言われる三の姫様を娶って幸せになるなど、到底できません」
姫「三成様…」
話がふり出しに戻ってしまい、三の姫は肩を落とした。
三成の決意は固く、説得できる術がないように思えた。
そこに家康の大きなため息が聞こえた。