第84章 結ぶ
家康「三の姫とお前を放っておくといつまでも話がまとまらない。姫を無駄に泣かせるだけだ。
三成、単刀直入にきく。
世間の評価、今のお前の生活は放って答えろ。
お前自身がどうしたいと思っているか。
お前はここにいる姫と一緒に生きたいか、生きたくないか」
姫「父上様…」
眦をあげて家康に噛みついていた三の姫の動きがピタリと止まる。
家康「この通り泣いていたかと思えば、刀を振り回す男を平気でいなそうとする。
がみがみ小うるさいかと思えば、突然旅に出て連絡ひとつ寄こさない。
この風変りの姫と共にありたいと思うか?」
三成は逡巡し、すぐに穏やかな表情で答えた。
三成「三の姫様は家康様によく似ていらして、とても可愛らしいお方です。
何にも染まらない純粋なお心は何物にも代えられない宝となりましょう。
口うるさいとおっしゃられますが、それは誰かを思ってのこと。
感情豊かなところも自由奔放なところも、とても好ましく思います。
無礼は承知ですが、なんの枷も無ければ姫様と共にありたいと思います」
『決して許されないことでしょうが』と最後に付け足し、寂しそうに笑った。
姫「…三成様」
自身が嫌われているわけではないとわかり、三の姫の頬に赤みが戻った。
家康「俺に似て…ていうところは要らない。なんか悪寒がする」
三成「それは大変です、お風邪を召したのでしょうか」
三成が真剣に心配する様子に姫がクスクスと笑い始めた。
姫「三成様、大丈夫です。父は風邪などひいておりません。
きっと三成様の言葉が胸に響いたのでしょう、フフフ」
口元を押さえてもまだ漏れるクスクスとした笑いは年相応のもので、三の姫の容貌と相まって花がほころぶようだ。