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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第84章 結ぶ



家康「まだかの人を?」


姫の心情を慮ったのか家康は言葉を選んだ。
先程三成の口から舞を未だに慕っていると直に聞いている。

しかし好意を持ってくれる女を目の前にしても遠ざけようとするほど、舞を強く思っているのか、という意味で再度聞いたのだ。


三成「確かに私の胸の内にあの方はいらっしゃいます。
 ですが姫様の真っすぐな気持ちをお聞きして、正直嬉しく思いました」


だったらどうして?というように三の姫が涙を拭いながら見た。
その細い方は震え、時々しゃくりあげている。

家康は三成の言わんとしていることを理解して、剣を含んだ眼差しを和らげ、姫の背中に手をあて落ち着かせようとする。

三成はずっと頭をさげたままだ。


姫「……?」


三の姫は家康の表情が柔らかいことに気が付いたが、どうしてなのかはわからず見守っている。

父の落ち着いた様子に、姫の乱れた心が落ち着きを取り戻した。


三成「石田三成は大罪人として広く知れ渡り、その名は地に落ちました。
 まして今は世捨て人のような生活をしております。

 とてもこのような人間が徳川の姫様を傍におくなど、到底叶わないことです。
 それに私だけ幸せになるなど、影武者の私とともに戦い散っていった方々に対して申し訳がたちません。

 三の姫様はとてもお若いのです。私のような盛りを過ぎた男ではなく、あなたに見合った青年に幸せにしてもらってください」


三の姫がかぶりを振ると美しい金髪が悲し気に揺れた。


姫「いいえ…いいえっ!そのようにおっしゃらないでください!
 わ、私はっ、あなた以外の殿方の傍になど行きたくありません!徳川の姫というのが気にかかるというのなら、全て捨ててあなたの傍に参ります」

三成「っ!それはいけません。家康様の大事な姫様にそのようなことはさせられません!」


ハッとして顔を上げた三成の顔に笑みはなく、戦に向かう時のような厳しさを湛えていた。

始終笑みを浮かべていた三成が声色まで変えて強く諫めてきたので、三の姫の肩がピクリと震えた。

姫は両手で顔を覆い、涙がその手首をつたった。


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