第84章 結ぶ
三成「そうでしたね。私がこの地で静かに暮らせるかどうかが姫様にかかっているのでしたね。
姫様がどなたかに私の生存をお話してしまうかもしれない、ということですか?」
三の姫が扇子を取り落としそうになった。
さっきまで赤みを帯びていた頬が青ざめていき、否定するように首を横に振った。
家康「馬鹿。知らないだろうけど、こいつはお前を秘密裏に探していたんだ。
近年の三成の行いがどうもおかしい、まるで別人のようだと俺に訴え続け、お前の首がさらされたと聞いて三条河原まで見に行き『あれは三成様ではない。どこかに生きているはず、探してきます』と臥せっていた俺に言い残して直ぐに城をとびだしたんだ。
この地でお前を見つけたのは偶然じゃない」
三成が目を見開いて三の姫に視線を向けた。
三成「あなたのようにうら若い、しかも徳川の姫という身で生首を見に行ったというのですか?
なんと豪胆なお振舞でしょう」
感心したように紫の目はキラキラと光り、姫に強い興味を示しているのがわかる。
三成「しかし三の姫様はなぜ別人のようだと感じたのですか?
それに誰よりも先に私を見つけてくださったのは、どのような手段を使われたのですか?」
姫「秀吉様が亡くなられた後から、あなた様のなされた事ひとつひとつに違和感のようなものを感じたのです。
はっきり何がとは言えないのですが、それまでの三成様はもっと知略に満ちたご判断を下していたように思うのです。
先の先を見越して策を練っていく見事な手腕でしたのに、突然ご判断が鈍られたように思えたのです」