第84章 結ぶ
姫「首については大分惨い事になっており判別しにくかったのですが、顔の線が違ったのです。
本物の三成様より少しごつごつした印象を受けました。これに関しては確証があったわけではなく、私の勘でございます。
私は父のように斥候を放つ術(すべ)はありません。
ひたすら三成様の縁をたどっていくしかありませんでした。
あちこち訪ね歩いても見つからず途方に暮れていた時、三成様の叔父上様にあたる方の奥様が信心深い方だったという情報を得ました。その方はこの地に寺を建てたと記録に残されておりましたので、探しに参りました。
叔父上様は三成様がお生まれになる前に亡くなっており、可能性は低いと思いましたが。
…やっと見つける事ができました。この地で見つからなければ、北の国より順に南に足を向けながら探そうと思っていたところでした」
見つけた時を思い出したのか三の姫はホッとした表情を見せた。
まだあどけなさを残しながらもそれは誰もが見惚れるほど綺麗なものだった。
三成に対して悪意は全く無く、その生存を誰かに漏らすような人物ではないとわかる。
三成「私の戦略が変わったことに気が付くくらいに政に深い興味がおありなのですね。
豪胆な上に博識な姫様とは、流石家康様の姫様です。
誰もが忘れ去った薄い縁に気が付かれるとは素晴らしいです」
心底感心したように三成は微笑み姫を褒めた。
三の姫は再び顔を隠してしまい、家康がやれやれと言うように肩をすくめた。
家康「それでなんで三成の隠居生活に姫が関係するか、わかったか?」
三成「?いいえ」
姫「……」
家康「やっぱり…お前はそういう奴なんだ。
戦になれば1を知れば10を得るが、色恋になると10、いや100を知っても1を得ない」
三成「いろこい…色恋ですか?どこに色恋の話が…?」
ひたすら首を傾げる三成に家康は呆れるばかりだ。
その鈍さに苛立ちが募る。