第84章 結ぶ
三成「ああ、今日も跳ねていますか?長年周りの者にも諭されてきたのですが、どうも上手く直せないのです。お恥ずかしい限りです」
フフッと親しげに笑みを浮かべられて姫の頬が赤らんだ。
それを隠すように扇子で顔を隠してしまい、その横で家康が呆れている。
家康「まぁ、そういう訳でなりなりにそっくりのお前を一目見た時から、こいつはあれは誰だ、なんでなりなりと同じ格好をしているんだと、挨拶がしたいとか、それはもう煩かった。」
姫「なりなりが三成様を模して作られたものだったなんて知らなかったのです。驚くのも無理ないでしょう?
それに三成様は遠目で見ても、とても…」
三の姫はそこまで口にして言葉を止め、続きはいつまでも言わなかった。
三成は続きが気になったが、姫はますます顔を隠すだけで言ってくれない。
三成「なりなりに似ているとはいえ、私のような者の顔を覚えていて下さって光栄です」
ひと際整った容貌を持ち、滲む色気と柔らかい物腰は数々の女性の胸を焦がしてきたものだったが、三成自身は全く気付いていない。
姫は思わず、といったように扇子を下ろした。
姫「三成様はどの殿方よりも素敵な方です。ご自分をそのように評してはいけません」
三成「お優しい言葉をかけてくださり、ありがとうございます。
けれどどの殿方よりもと言うなら、それは家康様だと私は思います」
優しい笑みを浮かべて三成は家康を見る。
…が、家康は気持ち悪いというように口角を下げた。
家康「お前に言われると気持ち悪い。ていうか何、この不毛な会話。
さっさと終わらせたいんだけど」
仏頂面になった家康が大きなため息をついた。