第84章 結ぶ
おや?と三成が不思議に思ったところで、家康はその人物を連れてくると言って腰をあげた。
三成「家康様が直々に人を呼びにいくなどと…差し支えなければ私が参ります」
慌てて三成が立ち上がったが家康に制された。
家康「駄目。差し支えある。お前が迎えに行ったらひっくり返る」
三成「ひっくり返る…ですか?」
家康「いいから、黙って待ってて」
訳がわからないまま三成が待っていると、二人分の足音が近づいてきた。
襖が静かに開き、家康が一人の女の手をとって部屋に入ってきた。
家康の身内とだけ聞いていたが、とても若い娘だった。
身に着けている着物や簪は一目で上質なモノだとわかる。
部屋には女が着物に焚き染めたと思われる香が優しく広がった。
(徳川家所縁の姫君でしょうか?)
ジロジロ見るのは失礼にあたると判断し、三成は頭を下げて迎え入れた。
家康「三成、頭を上げていい」
三成は頭を上げた。
そうすると今度は女の方が深く頭を下げていて、顔を見る事はできなかった。
困惑を隠せない三成に、家康は女の紹介をした。