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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第84章 結ぶ


家康「俺が豊臣家と争う必要はないと思っていたから…か?
 俺がそう考えている限り、あの大戦は起きなかった。だからなのか?」


そんなことがあるのだろうか?

起きなければいけない戦があり、それを起こすために二人の人間を病に陥れる未知の力。

家康は深刻な顔をして、突拍子のない話に黙り込む。


三成「時の悪戯と言うべきなのでしょうか…
 500年先の舞様が偶然この時代に現れ、本来おこるべき事実を変えようとした。
 それを『時』が許さなかったのかもしれません」

家康「そんな馬鹿なこと…」


家康は息を呑んだ。
そしてふと舞の言葉が蘇った。



『ねえ、家康。戦がなくなったら家康はまっさきに何をしたい?』



家康「あれは…俺が天下を治めるのを知っていたからだったのか?
 俺が戦のない世を作ると知っていたから…っ」


家康が愕然として言葉を漏らした。


三成「家康様?」


三成が心配そうに見ていたけれど、家康は反応することもできずにいた。

フニャフニャと笑っていた女の顔が鮮やかに思いだされた。


(とんでもなく大きな秘密を抱えて、なんであんなに無邪気に笑えたんだ。
 得にもならないのに俺達の未来を守ろうとしたり!
 あんたみたいにお人好しの女、他に知らない)


家康は憤りのようなものを覚えたが、少しの間をおいて冷静さを取り戻した。


(三成と戦をしないで欲しいという、あの娘の願いは叶わなかった。
 けれど無下にはしない。『戦がなくなったら真っ先に何をしたいか』という問い………あの時はあり得ないと答えたけど、今の俺は『結ぶ』と答えよう。

 舞、500年先の世で俺の答えを見てくれるか?)


三成は舞を慕っていると言った。

家康とて今は妻子ある身ではあったけれど、安土に居たあの頃、確かに舞を慕っていた。

その想いを胸に、家康は三成を正面から見据えた。

何かしらの意志を固めた家康の眼差しは強く、三成を圧倒した。


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