第84章 結ぶ
三成「これは確かめようもない話ですが舞様が言っていた『大喧嘩』というのは、関ケ原の戦のことだったのではないでしょうか?」
そう言われ、家康がハッとした顔をして三成と視線を合わせた。
家康「あの娘が500年先の世の人間で、俺達の行く末を知っていたってこと…?」
三成が真剣な顔で頷いた。
三成「私は家康様と争い破れ、死を迎えるというのが舞様が知る史実だったのではないかと。
お優しい方でしたから、安土で家康様と私と知り合い、なんとかこの史実を避けたいと思われたのではないでしょうか」
家康「それが本当だったとしても、あの戦は起きてしまった…」
三成「ええ。残念なことに…。
私は今も昔も家康様を心から尊敬しています。それだけでなく、舞様をお慕いしておりました。
舞様が国へ帰ってもう長い時が経ちましたが、この想いは未だに私の心にあり、あの方が『一生のお願い』として残した言葉をずっと守りたいと思っておりました」
家康「三成…。お前、相変わらず馬鹿正直だな」
臆面もなく尊敬してる、舞を未だ忘れられず慕っていると言われ、家康はなんと反応してよいやら、困惑する。
しかし三成は『本当のことですから』と、昔と変わらず朗らかに笑って話を続けた。
三成「しかし突然の病に倒れ、あの戦で私は家康様に刀を向け、表向きは死んだことになりました。
これはあの戦は歴史上、『起きなければいけないこと』で、私は『家康様に負けて死ななければならなかった』。
舞様や私の個人の想いでどうにかなるものではなかったのでしょう。
戦をしかけるはずだった私が戦など起こす気が全く無かったために、大きな時の流れがそれを修正するように私に病を与えたのではないかと思えてきました」
家康「お前の病の説明はそれで辻褄が合うだろうけど俺の病はどう説明するんだ。
ハッキリ言って、舞に言われた事なんか、今の今まで忘れてたんだけど…」
そこまで言って家康は考え込む。
確かに忘れていたが、無意識にそれを覚えていたようにも思える。
わざわざ争わなくても秀吉から直に頼むと言われていたし、他に天下人の器を持った人間も居なかった。
むやみに戦をしても民が疲弊するだけで、なんの益もない。そう考えていた。