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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第6章 看病四日目 二人の香


(看病4日目)

(姫目線)


夜半過ぎに降り始めた雨は、城を出る頃になるとみぞれに変わりポタポタと重たい音をたてて地面に落ちてきた。

舗装されていない道は足元が悪くなっていて、泥をはね上げないように気をつけて歩くも、着物の裾には点々と汚れがついてしまっている。

持っていた傘を傾け空を見上げると、みぞれを降らせている灰色の雲は去る気配がない。

もともと重たいと思っていたこの時代の傘は、みぞれをのせて余計重くなり両手で持たなくてはいけない。


「買い物をする前から両手が塞がっていたんじゃ、今日はあんまり買い物できないな」


はぁと息を吐くと、吐息が白く曇った。



――――

足元を気にしながら買い物をして、いつもより半刻遅れで長屋に着いた。

軒先で傘を閉じて降り積もっていたみぞれを落とし、汚れてしまった着物を手拭で優しくふき取る。

時々風が吹いたので肩や袖、帯もしっとり濡れてしまっている。
上から順に拭いていると玄関の木戸がガラッと開いた。


手を止めて見ると謙信様が立っている。

一緒にいるところを見られないよう、細心の注意を払う謙信様らしからぬ行動だ。


私を目に止めると眉をキュッと寄せ、強引に手を引いて中に入れてくれた。

暖かい部屋の空気にホッとする。


「おはようございます。遅くなって申し訳ありませんでした。
 直ぐに朝食を作りますね」

謙信「朝食は良いから足を清めろ。しもやけになるぞ」


手を引かれて上り口に座らせられると、桶に湯が準備されていてフワフワと湯気が立っている。


「あ、ありがとうございます」


礼を言って左足の草履と足袋を脱いでいると、謙信様の手が右側の草履にのびた。


「謙信様、自分でやりますからっ」


驚いているうちにびっちょりと濡れた足袋まで脱がされ、あっという間に右足はお湯の中へ。

指先が赤くなるまで冷えていた右足がお湯の中で揺れている。
左足も桶にいれてホッとしたのも束の間、申し訳ない気持ちになる。


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