第84章 結ぶ
家康「確かにあの娘は物を知らなかったな。時にびっくりするくらいに。
その割に俺達が知らないような知識を持っていることもあった。
でもそれが今更、どうしたっていうの」
突然舞のことを話し出した意図が掴めず、家康は首を傾げる。
三成「私は舞様が国へ帰ったあの日、少しだけ二人きりでお話をする時間がありました。その時に言われたのです。
『周りを巻き込むようなとびきり大きい喧嘩を家康様としないで欲しい』と。
しかも一生のお願いとまで言われました。
私が承諾すると舞は安心したように微笑んでいらっしゃいました」
家康「そういえば俺も同じような事を言われた。
あれはいつだったか…多分俺が安土から駿府へ帰る時の別れ際だ」
家康は遠い昔の記憶を掘り起こす。
(舞は確か…)
『いつまでも仲良くしてね。できれば子々孫々まで』
『はぁ?なんであいつと子々孫々まで仲良くしなきゃなんないんだよ。
絶対い、や、だ』
『まあまあ、そう言わずに…ね?』
過去の会話とともにその時の物言いたげな舞の顔が思い出された。
家康「……お前と…『いつまでも』仲良くしろって、言っていた」
喧嘩をしないで
いつもでも仲良くして
………どちらも意味は同じだ。