第84章 結ぶ
家康は憤然とした面持ちで話し出した。
家康「息子や家臣達が勝手に病を隠し、戦の最中はさも俺が命をくだしているかのように偽った。どうしても姿を見せなくてはいけない時だけ用意していた影武者を使ったと言っていた。
会ってみたけれど俺に似ても似つかない、狸親父だったよ。
よくあれで影武者が務まったと思うくらいだ。俺があんなくだらない戦いをする訳がない。
高熱で意識をなくしている間に、事は勝手に進んでいったんだ」
三成「家康様…」
二人の間に沈黙がおりる。
三成は同じ無念を味わっている人間が居るなどと想像もしていなかったため、驚きを隠せなかった。
それは家康も同じで、関ヶ原の戦いにおいて愚行を犯した三成がどんな申し開きをするのかと思えば、自分と同じ病にかかっていたとは。
秀吉の臨終の場や葬儀で会った三成は、家康に戦を仕掛ける素振りは一切なかったし、情報もなかった。
隠していたとしたら余程情報戦に長けていたといえる。
それに秀吉の秘密を共有する者として、どこか三成の行動が腑に落ちなかった。
秀頼自身に道を選ばせるというのが秀吉の願いだったはず。その話を持ってきた時の三成は確かに賛同の意を示していた。
しかし最近の三成の行動は秀頼を天下人として扱っていた。
三成の不可解な行いが影武者や家臣達の判断で行われていたものだったとわかれば妙に納得がいった。
ずっと姿を見せず、言伝や文ばかり。
三成をよく知っていたからこそ近年の行いには首をかしげるばかりだった。