第84章 結ぶ
三成「情勢が不安定な時に私が不在では士気が下がると、家臣達は急ごしらえで影武者をたてたそうです。
公には『関ヶ原の戦いにおいて石田三成は、斬首された後にさらし首の刑になった』とされておりますが、それは全て影武者です。
私の病は秘匿され、高熱で意識を失っている間に、この身は所縁の寺院に移されていました。
身の回りの世話をしてくれる僧達は政には疎く、家臣達からの知らせもほとんどありませんでした。
病が突然快方に向かい、全てを知ったのは関ケ原の戦いも、大阪での2度の戦も、何もかも終わってからでした。
これがからくりの全てです。
今は縁のある寺に身をうつし、戦いで失われた命に手を合わせ日々過ごしています」
説明を終えた三成はわずかに顔をしかめた。
三成「病にかからなければと、どうしようもないことを思っても詮無いことです。
しかし豊臣家を守るため、秀頼様を導いてくれようとしていた家康様の恩に報いるため、私は大戦に発展するのを全力で阻止したかった。
関ヶ原で私についてくれたという各地の大名達にも本当に申し訳なく……」
膝上で日焼けした拳が悔しそうに震えている。
家康「終わってからでは何もできない。それは俺も同じだ」
三成「え?それはどういうことでしょうか」
目を丸くさせ、きょとんとした顔で三成が問う。
こういう顔はあの頃とちっとも変わらない、と家康が心の中で呆れる。
家康「俺も同じ病にかかった。臥せった時期が少し後みたいだけど、治った時期はほぼ一致している。
目覚めたら全て終わっていたよ」
三成「それはなんと…」
自分だけではなく家康まで同時期に原因不明の病にかかっていた。
偶然と片付けても良いのか三成は言葉を失った。