第81章 不思議な夢
「………?」
薄茶の瞳が不思議そうにあたりを見回し…やがて……
………秀吉の方を向いた………
視線が絡み合い、お互い驚いた表情をしている。
秀吉は恐る恐る名を呼んだ。
秀吉「……舞?」
「ひ、秀吉さん!?」
舞は秀吉の方に数歩歩み寄った。
(夢……なんだよな)
夢なのか、そうじゃないのか、もうよくわからない。
透けた身体がゆっくりと上へ持ちあがる。
秀吉「……幸せにな」
舞はこぼれんばかりに目を見開いて叫んでいる。
「っ、秀吉さん!!思い出して!!あの時のっ、信長様の言葉を!!
秀吉さんの願いを!」
(ああ、わかったよ。わかったから…元気でいろよ)
身体が持ち上がり、砂浜に立っていた舞の姿は一瞬のうちに見えなくなった。
来た時と同様、風のような速さで移動する。
その間秀吉は不思議なものを見た。
それが舞の記憶だと気づくのにたいした時間はかからなかった。
500年後の世で旅をしていた際、ひょんなことから時を駆けてしまったこと
謙信と出会い、恋に落ちたこと
安土を去った後すぐに子を産み、数年後に謙信達が追いかけてきたこと
戦国の世に戻ろうとしたら本能寺に降り立ってしまい、信長と蘭丸を助け出したこと
次に降り立ったところは本能寺の火事より30年程たった蝦夷地だったこと
時々誰かの記憶も混ざり、光秀が助かった経緯もわかった
(そうか、わかったよ全部…。舞、ありがとな)
もう一度感謝を述べると、秀吉の透けた体は寝ている体へ吸い込まれるように戻った。
さっきまでふわふわしていた身体が鉛のように重い。
だが、
秀吉「久しぶりに良い目覚めだっ」
秀吉の目は爛々と輝いていた。