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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第81章 不思議な夢


病に臥せっていた舞に『仮の話』と言われ、答えを求められている。

その仮の話は、面白いほどに現在の秀吉と状況が重なっていた。


秀吉『俺が先に死ぬっていうなら、考えられる限りの手段をとって家族には幸せな道を歩んで欲しいって思う』


若い頃の秀吉がそう答え、何か言いたそうに口ごもった舞の顔が鮮明に蘇った。


(そうだ……この後…)


部屋に突然信長が現れ、これまた秀吉の想像をはるかに超えた考えを披露している。

若い頃の秀吉は啞然とし、舞は青白い頬を少し紅潮させて安心したように微笑んでいる。

秀吉は茫然とした。


(舞は先の世の人間で、俺の最後を知っていて…あの話をしたとしたら?
 この記憶を忘れていなければ『家族に幸せな道を歩んで欲しい』という望みが叶うというのか?)


全部忘れていた。
自分の願いだったはずなのに。

大事な記憶だったのに。

信長の意見は筋が通っていると感心し、己もそのようにしようと決心したはずなのに。


(俺は、俺は……『家臣に』秀頼を頼むと言ってしまった)


この世の儚さを憂う中で、秀頼だけは目に入れても仕方がないほど可愛かった。

幼い秀頼の将来が心配でならなかった。


(夢を見ている場合じゃない。
 起きて『あいつら』に頼まなきゃならない)


最後にもうひと目と、再び砂浜を歩きだした舞を見る。

もう思考が直接入ってくることはない。

寂しくて泣いていた声は元に戻り、聞いたことのないわらべ歌を歌っている。

飲まず食わずで死にそうな状態だったのに秀吉の身を案じ『仮の話』をしてくれた心優しい女。


(舞、ありがとう。俺はお前に会えて良かった)


不意に舞の顔にかかっていた靄(もや)がとれた。


(!!)


20年ぶりに見た愛しい女の顔は、記憶に留めていたまま変わらないというのに


美しい


薄茶の瞳は抱えている赤子を一心に見つめ、愛おしげに細められている。


(天女………みたいだ。謙信に愛されて、お前は幸せなんだな………良かった)


胸がキュッと痛んだが知らないフリをする。


秀吉「来世で会おうな」


別れの言葉を口にした。


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