第81章 不思議な夢
蘭丸「舞様、連れてきたよ。
信玄様はお家に帰っちゃったかな」
足音がして、蘭丸君と綺麗になった幸村が立っていた。
頭には包帯が巻かれ、足は添え木がしてあった。
未だに槍を杖代わりにしているところを見ると、足の怪我は酷いのかもしれない。
結鈴は突然現れた幸村をじっと見ていたけど……
結鈴「なーんだ、幸村って結構おじさんだったんだね、ママ!」
幸村「おじっ!?ってお前、初対面の人間に向かって随分失礼だな。
ていうか、なんで俺のこと知ってるんだ?」
幸村が怪訝そうにしている。
「ふふっ、ちょっと訳があってね。
結鈴、幸村ったら佐助君と齢が近かったのに、おじちゃんになっちゃったの」
結鈴「浦島太郎?」
「あー、そんな感じ?いや、ちょっと違うか…」
幸村「~~~お前ら、人のことをおじさんとかおじちゃんとか言いやがって!」
蘭丸「さ、行こう。きっと謙信様から話を聞いて信玄さんが待っているよ」
「信玄様の家じゃなくて、謙信様と一緒にうちに居る…」
その時ガラッ!と勢いよく戸が開いて、謙信様と信玄様が姿をみせた。
謙信「やっと来たか」
信玄「…………驚いた。
謙信から話は聞いたが、ふっ、随分ふけたな、幸村」
幸村「っ、信玄様!」
幸村の頬にさっと赤みが走り、痛めた足を引きずりながら信玄様に歩み寄った。
信玄様は悠々と歩み寄り、幸村の髪をぐしゃぐしゃと撫でた。
髪で表情が見えなくなったけど、幸村は何も言わなかった。
信玄「帰れなくて悪かったな。病は先の世で治してきたよ」
信玄様は腫瘍があった場所に手をあてて、俯いている幸村を優しく見下ろした。
幸村「どんだけっ…どれだけ心配したと思ってるんですかっ!
あんたの家族も、家臣も……俺もっ、生きてるか死んでるかわかんねぇ信玄様を待ってたんですよ、ずっと!」
絞り出すような声で幸村は信玄様を責めた。
幸村には私達がここに居る事情を話しているけど、信玄様を目に前にしたらずっと抱えていた想いを吐き出さずにはいられなくなったのだろう。