第81章 不思議な夢
「ほんと。でもパパには内緒だよ?
またパパがやきもち妬いちゃうから、ママと結鈴の秘密」
結鈴「うん!」
「いつになるかわからないけど…次に会った時に光秀さんをびっくりさせられるように可愛い女の子になろうよ。
見た目だけじゃなくて、内側も磨こう!」
結鈴「内側…?」
「女子力を高めるのはもちろんだけど、お勉強も大事だよ!
光秀さんはすごく頭が良い人だし、鉄砲も舞も、和歌やお茶も嗜むし、お医者さんをしていたこともあるみたいだし、そんな凄い人をびっくりさせるのは難しいんだから。
結鈴、光秀さんが大好きなら、頑張ろうよ」
(光秀さんはきっとありのままで充分だって思ってくれるだろうけど……)
何か目標があった方が落ち込んでいる結鈴には良いだろう。
案の定、俄然やる気をだした結鈴がすくっと立ち上がった。
結鈴「結鈴、がんばって『いい女』になるね!」
「……はっ!?」
(『いい女』なんて単語、どこからきたの!?)
結鈴「光秀さんと信長様が時々言ってたの。『結鈴の母はいい女だな』って。
信玄様なんてしょっちゅう言ってるよ?」
「え………!?」
結鈴「わーーー、ママの顔が赤くなった!ふふ」
結鈴がおかしそうに笑って揶揄ってくる。
(元気になってくれたかな)
例え二度と会えなくても、初恋が実らなくても、身に着けたことが無駄になることはない。
実ってくれれば嬉しいことだけど、こればかりはわからない。
わが子の笑顔を見てそう思った。
「も、もう、この話はおしまいね。わるたんは大事にするんだよ?光秀さんの代わりなんだから」
結鈴「うん!」
わるたんをギュッと抱きしめて笑う顔は輝いている。
嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねると、結鈴の髪と一緒に光秀さんの織り紐が揺れた。