第81章 不思議な夢
急いで寝室へ行き、光秀さんの革袋を手に結鈴のところへ戻った。
二人きりにさせてもらいたいと伝えると、謙信様と信玄様は龍輝を連れて家の中に入っていった。
佐助君がよく本を読んでいた切り株に結鈴を抱っこしたまま座った。
「結鈴、ほら見て。光秀さんからのプレゼントだよ」
泣きじゃくっている結鈴には私の声が聞こえていない。
仕方ないので革袋のまま、結鈴に持たせた。
結鈴「なに、これ……」
結鈴はぐすんぐすんと鼻を鳴らしたまま革袋の中身を探っている。
結鈴「……みつひでさんのにおいがする…!」
キランと目が輝いた。
「光秀さんからのプレゼントだよ。開けてみて」
結鈴「うん!」
小さな手で滑りの悪い皮の袋を開けるのは大変そうだったけど、懸命にこじ開けて中身を取り出した。
結鈴「……………わあぁ!クマだけど、みつひでさんだ!」
「ふふ、これね、ママが安土の武将に作ってあげた『武将くまたん』のひとつなの。
名前は『わるたん』だよ」
結鈴「わるたん?」
結鈴が『ん?』という顔をして首を傾げた。
涙は止まったみたいでひとまず安心する。
「光秀さんはいつも意地悪してくるから、
『意地悪大好きわるたん』なの」
結鈴がぷっと吹き出し、私もつられて笑った。
結鈴「これ、きつね?」
「そう。光秀さんは安土に居た頃、白いきつねを飼ってたの。
モフモフで可愛かったんだから」
結鈴「キツネってペットにできるの!?」
「うーん、勝手に住みだしたって言ってたような…。
庭に放し飼いにしていたし」
結鈴「え~、逃げちゃわないの?」
「時々居なくなるけど帰ってくるって言ってたよ」
結鈴「ふーん、そうなんだ。名前は?」
「ちまき」
結鈴「ちまき?」
「えっと、きつねが現れた時に偶然ちまきっていう食べ物を持っていたとか言ってたかな。
ちまきってお餅を作る時のお米と、ニンジンとかシイタケをいれてお砂糖や醤油で味付けして、葉っぱで包んで蒸したものだよ。中身は地方によって色々あるみたいだけど…」
結鈴「へぇ……食べてみたい。みつひでさん、ちまき好きなの?」
「光秀さんはあんまり食べ物にこだわらないけどな……ほら、ママが作ったごはんもこんな感じにして食べてたでしょ?」
わるたんの丼を指差すと結鈴はうんうんと頷いた。