第81章 不思議な夢
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一歩家に入るとより大きく響く泣き声に、うっ、とひいた。
(光秀さんが言った通りだな)
龍輝「あ、ママだ!おかえり!ねえ、信長様達はもう行っちゃったって本当?」
「あ、うん。朝早いからって、もう行っちゃったよ」
龍輝「起こしてくれたら良かったのに」
「ごめんね、龍輝」
龍輝の口がちょっと尖った。
(龍輝はこのくらいで済んでるけど問題は……)
信玄「姫、謙信、おかえり。信長達は無事に行ったか?」
「はい…」
信玄「良かった。しかし起きてから結鈴はこの通りでな」
信玄様は困った顔で腕の中の結鈴を見る。
抱っこしてもらっている結鈴は寝間着のままで、しゃくりあげている。
結鈴「なんで起こしてくれないの!
結鈴、みつひでさんにバイバイしたかったのに!」
ボロボロと涙をこぼしてうわーんと泣きだした。
「ごめんね。本当に早い時間だったし、暗い道を歩いて行かなきゃいけなかったから…」
結鈴「それでもいいの!だって、みつひでさん帰ってこないかもしれないんだから、最後にちゃんとギュっしてバイバイって言いたかった!!」
謙信「結鈴…おいで」
わんわん泣く結鈴を謙信様が抱いてあやしている。
信玄様の胸元が涙で濡れて皺が寄っていた。
「信玄様、申し訳ありません。ずっと抱っこしていてくださったんですか?」
信玄「このくらい問題ないよ。光秀がもう行っちまったって聞いたら、結鈴が追いかけようとしてな。
抱き上げたら大人しくなったが泣きっぱなしだ。役に立てなくて悪かったな」
「いいえ、助かりました。そういえば結鈴は枕元の袋の中身を見ましたか?」
信玄「いや、見てないな。光秀のものだろうとは思ったが…」
「あれは光秀さんが結鈴にと置いていったものなんです。朝はバタバタしていて信玄様に伝え忘れてしまいました」
信玄「へえ、光秀も気が利くな。早く渡してやった方がいいかもな」
「ふふ、そうですね。
謙信様も困っているようですし、泣き止んでくれるといいんですけど」
私達の視線の先で、大号泣している結鈴を謙信様が一生懸命あやしている。