第81章 不思議な夢
船の上の佐助君が一瞬見えなくなったと思うと、甲板に煙が上がって、パーーン!と1発、赤い花火があがった。
佐助君の隣に立っていた信長様と光秀さんが煙を追い払いながらむせているのが見えた。
あの二人が避けられない早業で花火をあげるなんて流石だ。
(あらら、後で絶対信長様に怒られるやつだ…)
騒ぎになり始めた船の上で、佐助君はスルスルとマストのてっぺんまでよじ登り、大きくこちらに手を振った。
見張り番の船員さんが大きなゼスチャーで『降りろ』と言っているのが見えた。
幸村「ははっ、あいつ、相変わらず無表情で馬鹿なことやってんな」
隣に立った幸村が赤い槍を取り、天高く持ち上げた。
幸村は視力がいいのか佐助君の表情が見えているみたいで、苦笑いを浮かべている。
「ふふっ、気付いてくれて良かった…」
船は煙を帯びたまま遠ざかり、三人はもう豆粒のようにしか見えない。
朝日を浴びて輝く船体が遠く、遠くへ……
(信長様、光秀さん、佐助君……どうか無事で…)
祈りを風に乗せ、私達は幸村を連れて港を後にした。