第81章 不思議な夢
『幸村は赤い十文字槍で戦うんだけど、一振りで敵がバッタバタ倒れるんだ。
一騎当千とはまさに幸村のことだ』
ちょっとおじさんになってるけど、童顔も意志の強い真っ直ぐな眼差しも間違いなく幸村だ。
「幸村!?」
驚きの声を上げると、男の人は謙信様の刀を受け止めながら視線を投げてよこした。
??「お前………まさか舞なのか?」
謙信「ほう?俺の刀を受けながら余所見(よそみ)をするとは良い度胸だな…幸村」
幸村「くっ、忘れてたけど無茶苦茶だなっ!
つーか、なんで謙信様は若いまんまなんですかっ!」
二人は同時に武器を下ろした。
幸村は頭から出血していて全身びしょ濡れだ。
謙信「お前の方こそ何故そのように歳をくっているのだ?信玄より爺になっているのではないか?」
幸村「爺!?俺はまだそんな齢じゃねえ!
戦の最中にわーむほーるってやつに巻き込まれたんだ。っていうか信玄様は!?
謙信様が居るなら信玄様も居るんだろう!?」
「信玄様は留守番。今は見送りに、って、あの船!
佐助君が乗ってるの!!」
船は陸から大分離れて、三人の表情はもう見えないけど、ここで乱闘騒ぎをしているせいでこっちを見ているのがわかった。
幸村「はっ!?あの船どこに行くんだ?」
「外国!すんごい遠い所っ!佐助君はもう帰ってこないかもしれない」
(なんとか知らせたい!幸村が生きてるって)
佐助君が幸村の最期が書かれたページを何度も見返して…肩を落としていたのを知ってるから。
別れ際まで行く末を気にするくらい…ズットモを想っていたんだから。