第81章 不思議な夢
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第三者から見ればそれは涙を誘う、そんなシーンだったと思う。
だけどそれをぶち破るような出来事が起きた。
どさっ!!
「え?」
謙信・蘭丸「!?」
(な、なんの音!?)
たとえるなら米俵のような……
とにかく大きくて重たいものが高い場所から落ちてきたような音がして、場違いな声が響いた。
??「いってーーーー!!ここどこだよ」
(この声…どこかで聞いたことがあるような…)
船に向かって手を振っていた腕をピタリと止め、隣に立つ蘭丸君と顔を見合わせた。
感動も何も全部吹き飛んでしまうような声。
蘭丸君は警戒して刀の柄に手をやり、私を背中でかばった。
謙信「再び相まみえるとは…時の悪戯か」
謙信様は瞬時に好戦的な笑みを浮かべると、握っていた私の手を離した。
びっくりするくらい早く、振り向きざまに刀を抜いて斬りかかった。
「えっ!?謙信様?」
(いきなりどうしたのっ?)
ガキーーーーン!と思いっきり金属がぶつかり合う音がして言葉を失った。
蘭丸君もあまりのことに目を丸くしている。
武器同士が交差して、片膝をついて座っているその人の顔がちょうど見えない。
??「いきなり斬りかかってくるやつがあるか!!って……あんた、まさか…」
謙信「ふっ、どうした。亡霊を見たか?」
凄く嬉しそうな顔で謙信様が次の手を放つ。
外套や着物の袖が謙信様の動きに合わせて華麗に舞う。
キン!
その人は40代~50代の男の人で、謙信様の刀を赤い槍で受け止めて……赤い槍……?
(まさか)
佐助君の『ズットモ』の話を思い出す。