第81章 不思議な夢
昨日お別れは済ませたけど、最後にもう一度挨拶をして送り出す。
最後に佐助君が、
佐助「時々歴史書の幸村のページが変わっていないか確認して欲しい」
「うん、わかってる。
幸村の最期、変わると良いな。
変わったところを、佐助君と一緒に見たかったな。
幸村の最期が変わるように一生懸命お願いするね」
佐助「泣かないで、舞さん」
「だって寂しくて」
謙信「佐助。舞を泣かせるとはどういう領分だ」
謙信様の刀が鞘からスラリと引き抜かれた。
朝日に照らされ刀身が眩い輝きを放つ。
「わっ、わっ!?落ち着いてください」
謙信「早く戻れ、いいな?」
佐助「…はい」
潮風に吹かれ三人はまっすぐ船へと歩き出した。
寂しがっている私の手を謙信様が握ってくれている。
信長様に私の面倒を見るように言われた蘭丸君も、目にいっぱい涙をためて見送っている。
船のタラップを踏み、三人が乗船して少しすると船はゆっくりと動き出した。
「あ……」
追いかけたくなって数歩前へ進んだ。
三人との思い出が一気に溢れてきて胸がいっぱいになった。
(信長様…光秀さん…佐助君…)
この期に及んで『行かないで』って叫びたくなった。
大人ぶって『さよなら』なんて……言えない。
船出を祝福するように黄金色(こがねいろ)の朝日が船舶を眩しく照らしている。
蘭丸「…雨だ」
空は晴れているのにパラパラと小雨が降ってきて、雨粒が宝石のように反射してとても綺麗な風景だった。
甲板にある姿に大きく手を振った。
「信長様っ、光秀さんっ、佐助君っっ!どうかご無事で!」
我慢しようと思っていたけどそんなの無理だった。
拭っても拭っても溢れてくる涙が止まらない。