第81章 不思議な夢
謙信「仕方ない。お前が良いなら、きゅーすけも連れて行け」
「え?でも結鈴達が悲しむと思いますよ」
謙信「だがこれ以上ぐずぐずしていられないだろう」
佐助「そうですね」
「光秀さん、ちょっとすみませんけど、ここで脱いでもらえますか?」
脱げばいくらなんでもきゅーすけも出てくるだろう。
光秀「おや、こんなところで一糸まとわぬ姿になれというのか。謙信、お前の奥方は随分と積極的だな」
「ちょっ、誰も全部脱げって言ってません!」
謙信「……舞、あとで仕置きだ」
「え、ええ?私が悪いの?
もー、きゅーすけのせいだよ、早く出てきてよ」
光秀「ふっ、そんなにまさぐるな。くすぐったい」
光秀さんが面白がっておおげさに表現するから、余計謙信様が苛立っている。
「も、もう!光秀さんも本気出してくださいよ!」
見上げると琥珀の瞳と目が合った。
考えていることを覆い隠し、美しい双眸が見下ろしてくる。
察することはできなかったけれど、何か大きな想いを胸に潜ませているのはわかった。
「み、つひでさん…?」
光秀「きゅーすけを貰っていっても良いか?
『昨夜のあれ』と交換だ」
「え…?」
信長「ふっ、それはなかなかに良いな。
舞、結鈴には『きゅーすけは光秀の共として一緒に行った』と、そう言ってやれ。
結鈴も本望だろう」
光秀「信長様、それはどういう意味ですか」
信長「俺と結鈴の秘密だ」
信長様は、私も光秀さんも知らない何かを知っているようだった。
わざわざ『秘密だ』と言ったからには聞いても教えてくれないだろう。
諦めて、きゅーすけを出そうとしていた手をひっこめた。
「では、ご迷惑でなければ。良いですよね、謙信様」
謙信「かまわぬ。明智、大事にしてやってくれ。
龍輝と結鈴が可愛がっていた猫だ」
光秀「礼を言う」
「きゅーすけ……元気でね。どうしよう、きゅーすけの準備、何もしてない」
突然のお別れに胸が余計に痛む。
愛用していた寝床のタオルを持ってきてあげれば良かった。
いつもつまみ食いされる煮干しも持ってくれば良かった。
光秀「大丈夫だ。なんとかする。ありがとう、舞」
光秀さんは乱れた着物を簡単に直した。
きゅーすけが入ってるから懐が膨らんでいる。