第81章 不思議な夢
信長「待て、何故俺はそのように心配されなければならんのだ。
うるさく心配するのは猿だけで充分だ」
信長は顔をしかめ、手の平をひらひらさせて煩(うるさ)がる。
「ふふ、信長様の存在は唯一無二の存在ですもの。
その身を大事にしてほしいと思ってしまうんです」
秀吉はうんうんと頷いた。
(流石舞だな。俺と同意見だ)
信長「いよいよ秀吉に似てきた。貴様、秀吉に憑りつかれておらんか?」
「正気ですっ!」
表情は見えないが、舞が頬を膨らませて…いる気がした。
「寂しいですが、この地で信長様達のご無事をお祈りしていますね」
信長「ああ、貴様の祈りはとんでもない力を秘めているとわかったからな。
稀代の縁起物を拾ったものだ」
(稀代の…縁起物?)
舞を褒めやかす信長の言葉に首を傾げる。
安土に居た頃は至って普通の、女だった。
(『祈りに力がある』など微塵も感じなかったが…)
「そうだ、これを差し上げるのを忘れていました」
舞は小さな人形を差し出した。
手の平にすっぽり収まる大きさの人形で、信長は受け取ると眉間に皺を寄せた。
(あの人形はなんだ?)
秀吉が居る場所からは緑と赤が少し見えるだけだ。
信長「なんのつもりだ」
光秀「そっくりだ、くくく」
光秀に渡った人形が、てっぺんに付けられた紐に吊られてユラユラと揺れた。
(あれは……もしや)