第81章 不思議な夢
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目の前で宴会が開かれている。
あの日誌を見て想像した者達が一同に介している。
(なんだこの集まりは?)
昔であったなら敵同士の人間が、酒を酌み交わしている。
混乱する頭で秀吉はそれを見守った。
信長、光秀、蘭丸が座り、その向かいに信玄、佐助が座っている。座布団が二つ空いているのは謙信と舞の席だろう。
信玄「で?信長、お前たちはどこまで行くつもりだ?」
優雅に徳利を持ち上げ、信玄が信長に酌をする。
あり得ない風景に秀吉は目を疑う。
信長「佐助達が『よーろっぱ』と呼んでいる国々へ行き、各国を歩いて回る。
最終的にどこに留まるかは決めておらん」
信玄「目的地を決めない旅か。面白そうだな」
信長が徳利を持ち上げ、信玄が持っていた盃に酒を注ぐ。
信長「一緒に来るか?貴様は500年後の世で南蛮の言葉を学び、剣術まで学んだのだろう。
かの地に足を踏み入れたいと思わぬのか?」
(……500年後?聞き間違いだろうか)
おかしな夢だ。突拍子もない話がポンポンと飛び出てくる。
信玄「いいや、残念だが俺には心配でたまらない駄々っ子が居るんでね。そいつを残しては行けない」
謙信「……駄々っ子とは誰の事だ」
戸が開き、謙信と舞が姿を見せた。
光秀「寝たか?」
「ええ、やっと。結鈴が寂しがってなかなか寝てくれなくて…」
蘭丸「結鈴ちゃんは光秀さんが大好きだからね。
外国に行っちゃうのが寂しいんだね」
光秀「……」
光秀は素っ気ない態度で酒を口にもっていく。
「帰ってくるの?また会える?ってそればっかりで…」
舞は寝かしつけに疲れたのか軽く息を吐いた。
信長「先は何も決まっておらぬからな、その問いに答えられる者はおらん」
(外国?海を渡ろうとなさっているのか)