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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第81章 不思議な夢



(俺は天下人の器だったのだろうか)


考えないようにしていた。

天下を治めてから数々の政策を打ち立てたが、信長ならもっと上手くやったのではないかと。

この政策は本当に民のためなのか。自分よがりではないかと判断を鈍らせることもあった。

日ノ本のてっぺんに立ってみれば自分の器の小ささばかり自覚し、いつも信長の背を負いかけては最後には目を背けた。

今思えば汚いやり方でこの地位を手に入れた。
死を目前にした今、そのことがひどく重たくのしかかった。

そこまでして手に入れたのはなんだっただろうか。

自分にひれ伏す大勢の人間、豪華な城、贅を尽くした品々、年の離れた若い側室。


どれも心を満たさない。


秀吉は苦い気持ちになり、信長の穏やかな表情を見ているのが辛くなった。


(信長様は冷たい目をなさっていたが俺達を信頼して、いつも導いてくださった。
 信長様には俺達が居た……俺は、俺は……どうだ?)


何もない

誰も居ない


(俺が得たものはなんと儚いものか……)


たちまち心が冷えた。
なんのために生きたのだろうと、虚しい思いが無尽蔵に溢れ出てくる。


女「私があの時連れてきてしまったばかりに、奥様やお子様に会えなくなってしまいました。寂しくはないですか?」


切ない表情をしているだろう…そんな声で舞はたずねる。


(何故…なんで舞の顔だけ見えないんだ?)


冷たい胸の内を仄かに温めてくれているのは紛れもなく舞なのに、顔にもやがかかって見えない。


(顔を…見せてくれ)


動かない身体の代わりに、手を伸ばした。


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