第81章 不思議な夢
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女「皆さん、お食事ができました」
ひと目で怪我人とわかる若い男達が5,6人寝ていた。
子供を2人連れて、女は食事を運んでくる。
顔が霞んでよく見えないが、縫物をしていた女と同一人物のようだ。
男1「朝日殿、かたじけない」
(朝日……?)
秀吉が眉をひそめた。
慌てて腰をあげようとする男を朝日殿と呼ばれた女がやんわりと止めた。
女「動いたら駄目ですよ。まだ傷が塞がっていないんですから。
それとも待ちきれないくらいお腹がすきましたか?ふふ」
男1「いえ、そういうわけでは…。朝日殿もお人が悪い」
(これはもしや蝦夷で遭難したという男達の……夢か?)
夢なのだろう…だが妙に現実味がある。
秀吉は黙して見ることにした。
女「お気遣いなさらずお待ちくださいね。早く怪我を治してお殿様のところへ帰らなくては…ね?」
子供達も手伝い、質素ながらも色どりよい食事が並べられた。
男2「朝日殿は器量よしで、料理も上手でいらっしゃる。
旦那様は果報者ですね」
女が照れて俯くと薄茶色の髪がサラサラとこぼれた。
(ああ、あいつの髪も薄茶で綺麗だったな。柔らかくて、触り心地もよくて…)
ことあるごとに頭を撫でていた自分を思い出す。
(胸が熱い。朝日…お前の本当の名は……)
ガラ
なんの断りもなく戸が開き、白い着物に青い袴の男が入ってきた。
怪我人達は一様に押し黙り、
秀吉はごくりと唾を飲んだ。