第81章 不思議な夢
(第三者目線)
枕元に日誌を置いて秀吉は直ぐに睡魔に襲われた。
病で弱った身体はたちまち深い眠りへと引き込まれ、しとしとと降っていた雨が強い雨に変わったことに気づくことはない。
ザーーーーー―――
……ゴロゴロゴロ
(ん……)
眠りの中で秀吉は身体がフワリと軽くなるのを感じた。
不思議に思って目を開けると、目の前に秀吉自身が寝ている。
ついに死んだかと驚いていると軽くなった身体だけ、もの凄い速さで上昇した。
褥に身体を残したまま、天井、屋根をすり抜け、気づけば城の上空に浮き上がった。
(なんだ…?)
見ると身体は半透明になっており、降り注ぐ雨さえ秀吉の身体を無い物ののようにすり抜けていく。
少し離れたところで雷が鳴り、闇夜に光の筋が走った。
ひゅぅ!
一陣の強い風が吹き、体ごと遠くへ飛ばされた。
幾多もの山や川を越え、北へ、北へ……そして海を越えた。
凄い速さだ。まさしく風のような、いやもっと速いかもしれない速さで移動している。
秀吉が知らぬ土地までくると、今度は身体が急降下を始めた。
実体がないせいで浮遊感はないが、目から得られる情報で思わず身構える。
質素な建物が足下に迫り、衝突を覚悟した……が半透明の身体はするりと家の屋根をすり抜けた。
(おかしな夢だ)
ひとまず安堵して、秀吉はぷかぷかと天井付近に浮いたまま家の中を見渡した。