第81章 不思議な夢
白い影がゆらっと動いたのを目で追っているうちに、冴え冴えとした香りが鼻先を掠め、耳元に吐息がかかった。
「!?」
光秀「いつまでたっても…
……色気のない小娘だ」
最後に『ふぅ』と息を吹きかけられ、背筋にぞぞぞっと寒気が走った。
「な、な、な!?そ、そんなこと言うためにわざわざ思わせぶりな色気を出さないでくださいっ!!!!」
耳を押さえて後ずさりすると、光秀さんがおかしくてたまらないと言わんばかりに肩を震わせている。
光秀「おや、思わせぶりな色気に少しは胸を騒がせた、と言ったところか?
望むなら、思わせぶりではない色気を出してやってもいいが」
「もう騙されません!ふんっ!
光秀さんこそ!いつまでたっても意地悪っ!!!」
光秀さんの前では湿っぽい別れの雰囲気もどこかへ行ってしまった。
わざとそうしてくれたのかもしれないけど。
意地悪い表情をひっこめ、見とれるような綺麗な笑みを浮かべた。
光秀「その調子で幸せに生きろ。
わるたんを結鈴に…頼むぞ」
そう言って去っていく背中を見ながら思った。
ただ単に私との別れを惜しんでくれたから?
それとも娘のように可愛がっていた結鈴と離れるのが寂しいから?
それを直接光秀さんに聞くことはできなかった。