第81章 不思議な夢
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信長「なんだ上杉の忍びに泣かされてきたのか?」
佐助君の家を訪ねた後に信長様の家に行くと、お邪魔するなり開口一番でからかわれた。
「寂しくて仕方ないので佐助君を困らせてみました」
信長「ふん、泣いても何も変わらん。お前はここで笑って過ごせ」
俺様な信長様とも、あと2日でお別れだと思うと言い返す気力が出ない。
「はい……」
しおらしく返事をすると、信長様はやれやれと肩を竦めた。
信長「あの雪の日も別れが近づくとお前は口数が少なくなって、今のように捨てられた犬のようになっていたな」
「捨てられたって…もう、たとえが酷いです!」
むっとしてつい口答えしてしまった。
信長「ふっ、その勢いだ」
簡単に信長様に踊らされる自分が恨めしい。
悔しいと内心思いながら、この部屋を訪れた目的を信長様に差し出した。
信長「これはなんだ?」
私が差し出したのは着物の生地で作った女性用のグローブとハンカチだ。
「何かあった時はこれを売って下さい。売れるかわかりませんが、500年後では日本の和柄は外国の人達にとても人気があるんです。
この時代だと和柄を見たことがない人が殆どです。
とても珍しくて売り物になるのではないかと…。
ただ……珍しすぎて売れない可能性もありますが」
信長「このような普通の柄で良いのか?」
桜柄、菊の花、松竹梅など、珍しくもない柄を見て信長様が首を傾げている。
小物や着物を縫った時の端切れで作ってある。
「ええ、特段良い生地、柄を使わなくてもあちらでは希少価値があると思います。
あちらの女性に親しみをもってもらえるようにレースをつけておきました」
ハンカチの縁と、グローブの手首のところに白いレースをつけておいた。
荷物が増えると大変なのでそれぞれ3点ずつだ。
「ヨーロッパの女性はお洒落にとても敏感なんです。
欲しいと思えば高く買ってくれる可能性がありますので、上手くお使いください」
信長「わかった」