第81章 不思議な夢
光秀「落ち着け舞。半分ほど何を言っているからわからんぞ。
それに俺達とて何の準備もなしに行くわけではない」
「私が言っている内容を理解できないうちはまだ行かないでください。準備不足です」
信長「ふっ、貴様に『駄目だし』されるとは思わなんだ」
「笑い事じゃないです、信長様っ!」
聞けば西洋の文化や歴史を佐助君から少しずつレクチャーしてもらっているそうだ。
佐助君は英語をマスターしているのでそれも教わっているらしい。
知らなかったけど蝦夷に住み着いてからずっと、謙信様や信玄様からも英語以外の言語も教えてもらっていたそうだ。
南蛮行きの計画は…大分前から立てられていたみたいだ。
信長「まだ佐助から学ぶことは多い。ろしあの船がやってくるまでのあと半年、俺達は旅に備える。
舞には俺達の『ようふく』を作ってもらいたい。旅の最中に着られる、丈夫なものを」
「……本気で行かれるつもりなのですね」
信長「もちろんだ。戯言だとでも思ったのか?」
「そういうわけではありませんが……」
もう一度信長様と光秀さんを見たけど、意志は固そうだ。
「一緒に行きたいところですがこの子も小さいですし…。
おかしな身なりにならないよう、しっかりしたものをご用意したいと思います」
信長「ふっ、じゃじゃ馬は相変わらずだな。女の身で海を渡りたいなどと…」
「500年後では普通です!!そういうところを直さないと南蛮の女性に嫌われてしまいますよっ!」
信長「わかった、わかった。そう眦をあげて怒るな」
「心配だから怒ってるんですっ!」
光秀「信長様を叱りつけるなんて、秀吉とお前くらいしたものだ」
光秀さんが肩を揺らして笑っている。
「もー!何笑っているんですか!光秀さんの服、狐の着ぐるみにしますよ。
もっふもふにしてやるんだから」
光秀「『着ぐるみ』が何か知らんが、普通の洋服にしてくれ」
頬を膨らませて怒る私と、眉をひそめた光秀さんを信長様がおかしそうに見ていた。
もしかしたらお二人は、ここでの生活の基盤が整うのを待っていたのかもしれない。
私達がここで暮らしていけそうだと見定め、次は自分たちの夢を叶えるためにと、旅立ちを決意したのかもしれない。
なんとなく…そう思った。