第81章 不思議な夢
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―朝日殿の夫は酷く嫉妬深い男で、朝日殿が私達と談笑していると度々現れ、強引に連れ去っていく。
色違いの目は人を射殺せそうな迫力があり、刀のように研ぎ澄まされた気配はそら恐ろしく、いつ刀を抜かれるかと肝を冷やす。
だが人を惹きつけてやまない不思議な魅力を持っている御仁だ。
―朝日殿の夫の傍には眼鏡をかけた付き人が居る。
無表情ながら面白みのあるお人のようだ。
音もなく現れるので何度も驚かされる
―山のように背の高い男がここでは一番の年長者のようだ。
といっても長ではないようで、私達とそう深く関わろうとはせず2歩も3歩もひいて、こちらを眺めているだけだ。
大阪の街にでれば女子(おなご)の目を惹くような色男だが、懐深い言動や穏やかな表情の奥に油断ならぬ何かを隠し持っている。
腰に下げている長刀は幅広で、あれを振るえるとは並大抵の男ではない
―油断ならない男がもう一人いる
姿を見た者は少ないが腰から種子島を下げ、食えぬ笑みを浮かべた狡猾そうな男
朝日殿に聞いたら『誤解されやすいが優しい人』と朗らかに微笑まれた。
朝日殿が嘘を言うとは思わぬが、にわかに信じられない。