第80章 豊葦原千五百秋水穂国
「はっ…すみません、大丈夫で、す……」
さっきの陣痛は全然いきめなかった。
次は頑張ろう。
光秀「舞、肩で息をするな。腹に吸い込むように大きく、深く、だ」
「はい」
光秀「……頑張れ」
低い声で励まされ、目を瞑ったまま頷いた。
「はっ、あぁ、ふーーー」
陣痛に合わせて息を吐きながら、身体を起こすようにしてお腹に力を入れる。
何度も繰り返していると、ついに終わりが見えてきた。
光秀「舞っ、もうすぐだ。赤子の頭が出てきた」
光秀さんの指に赤ちゃんの頭が当たったらしい。
「はいっ、うぅっ!」
もうどこが痛いのかわからない。
お腹なのか骨盤なのか尾てい骨なのか、下半身全体が痛くてしかたがない。
痛みは頭を麻痺させ、痛くもないのに背中や肩まで痛い気がしてくる。
龍輝と結鈴は双子だったから身体が小さかった。
今回は内側から押し開くような圧迫感が以前より酷いし、いきんでから出てくるまでも時間がかかっている。
痛い
苦しい
でも産みたい。私と大好きなあなたの子供だから。
「謙信様っ…!」
私の手汗がうつって滑りがちになるのをギュッと握って支えてくれている。
謙信「舞っ……頑張ってくれ」
呻くような声が震えている。
(早く安心させてあげたい。赤ちゃんを抱かせてあげたい)
「ふっ、ぅぅ~~~~~~~ん!」
両足を踏ん張りお腹に思いっきり力を入れた。
ふるふると体全体が震える。
「……あぁ…」
それでも赤ちゃんは出てきてくれなくて、一旦身体から力を抜いた。