第79章 真田幸村の最期
その頃幸村は顔を洗い、目を清め、頭から水を被っていた。
水を被る度に赤く汚れた水が川へと流れ込んでいった。
幸村「はぁ」
水鳥が水しぶきの音に驚き飛び去って行く。青々と茂った木々が風に吹かれ騒めいた。
すぐ傍が戦場であることを忘れさせるような風景だ。
幸村「これからどうすっかな…」
頭から水をかぶったおかげで、冷静さを取り戻した。
幸村が率いてきた兵はほとんど壊滅し、敗走した兵もどうなったかわからない。
力不足ではなかった。幸村をはじめ兵の一人一人が善戦した。
……ただ圧倒的な数で押し切られてしまった。
幸村「くそっ」
額に手をあてて悔やんでいると、神社の方から人の声がした。
幸村「…?」
水から上がり、神社へ戻ろうと歩き始めた時…
…ぽつっと雨があたった。
ぽつ…………ぽつ………ぽつ…ザーーー
瞬く間に土砂降りになり、幸村は頭上を見上げた。
幸村「さっきまで晴れていたのに、なんだ…?」
頭上は厚い雲に覆われ、雷の音が聞こえ始めた。
雲はこの周辺だけを覆っている。