• テキストサイズ

☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第79章 真田幸村の最期



男「無駄だ。助からないことぐらい見ればわかるだろうに…」


男は手拭いを押し当てている幸村の腕をどかそうとしたが、指一本動かせず苦笑した。

幸村は少しでも身体の負担がなくなるだろうかと、男の鎧を脱がせてやった。

男の鎧も幸村のものと同じくらい傷ついていて、するりと脱がすことができた。

ぼうぼうと伸びている草むらにドサっと音をたてて落ち、鎧は見えなくなった。


幸村「死ぬなっ、一人でも多く……生き残れ!」


幸村の脳裏に次々と倒れ伏す味方の姿が浮かぶ。
唇を引き結び、目頭が熱くなるのを必死でこらえた。

その様子を見て男は口元を緩めて言った。


男「幸村は若い時から滅法強かったが、本当は戦なんて嫌いだったろう?
 戦わなければ守れないなら刀を取るって……お前の人生は戦続きで不憫なもんだ。
 俺はいいから顔を洗ってこい。血みどろで化けもんみたいだ。
 この神社の裏手を少し行くと川があったはずだ」

幸村「このくらい平気だ」


そう言いつつも左目に入りこんだ血で目が開かなくなっている。

ゴシゴシ擦ったところで血が落ちるわけなく、幸村は煩わしいというように頭を振った。


男「顔洗ってこい。お前が戻って来るまでは生きていてやるから」

幸村「俺より年若のくせに縁起でもねぇこと言うな。
 生きろって言ったばかりだろ」


男は適当に返事をして『行け』というように手をひらひらさせた。


幸村「…いってくる。勝手に死ぬなよ」


幸村は槍を杖がわりにして神社の裏手へとゆっくりと歩み去った。


/ 1735ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp