第5章 看病三日目 護身術と誓約
「ええ、なんともないです」
背中を打った痛みが少しあることは内緒にした。
そうしないと佐助君の先輩がさらに責められるような気がしたから。
謙信様は疑うように目を細めて、
謙信「本当か?後で佐助にお前の体を確認させるぞ?」
「はっ!?そ、それは駄目です。本当に大丈夫ですから!」
(佐助君とは恋人でもなんでもないんだから、そんなこと命じられたら佐助君だって困っちゃうよ!)
謙信「頑なに拒むとは余計怪しい。
怪我をしているのではないか?」
「し、してません!
たとえ恋人だろうが友達だろうが同姓だろうが、体を見せるなんてはずかしくないですか?」
謙信「そういうものか?」
「そういうものです!」
話が脱線してしまって、どう収拾をつければよいかわからない。
「では伊勢姫様は……謙信様とそうなった時、恥じらいませんでしたか?
女性なら誰でも恥じらうと思うんですけど…」
余程ナイスバディならいざ知らず大抵の女性は恥ずかしがるはず。
ましてお姫様として育った伊勢姫様は絶対恥じらったはず!
そう思って聞いてみたけれど、返答はあっけないものだった。
謙信「俺と伊勢は体の繋がりはなかった」
「え?そうなんですか?それは失礼致しました。
と、とにかく誰であろうと私は恥ずかしいです。
怪我はしていませんのでご安心ください。さあ、冷めないうちに食べてください!」
怪我をしてないかの確認だったのに、なんで伊勢姫様との肉体関係の有無を聞く羽目になったんだろう?
困惑を悟られないよう早口でまくし立て、腰を上げる。
昨日の件があるので一緒に食べ始めたけど、謙信様の『体の繋がりがなかった』という言葉が頭の中をグルグル回って、料理の味がさっぱりわからなかった。