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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第5章 看病三日目 護身術と誓約


襦袢まで乱れていたので帯をほどき、着物を全部床に落として直す。

部屋の隅には謙信様の布団一式が畳まれた状態で置いてあり、それ以外は何もない部屋だった。
殺風景な部屋の中にシュルっと衣擦れの音だけが響き渡る。


(まさか部屋に現れた不審な人が謙信様の部下で、佐助君の先輩だったなんて…。びっくりしたけど、一言謝りたいな)


最後に帯を締めて部屋を出た。
謙信様はまだ紙に何かをしたためていて、佐助君の先輩は寝ている佐助君の様子を見ていた。

忍び装束だから表情はわからないけれど、佐助君を心配しているようにも見える。

少し怖かったけど歩み寄った。


「先程は申し訳ありませんでした。お怪我をされませんでしたか?」


相手が何か言う前にと、こちらから頭を下げた。


??「謝るのは筋違いです。
 私はあなたを問答無用で捕まえようとして、あなたは身を守るために抵抗した。それだけのこと」


冷たく静かな声がして私は頭を上げた。
佐助君を見ていた時の目とは違い、感情のない人形のように私を見返していた。


(本物の忍者ってこんな感じなのかな)


感情というものを感じさせない異様な雰囲気に戸惑うけれど、何しろあの佐助君が『お世話になっている』と言っていたのだ。
絶対悪い人ではないはず。


「それでも謙信様の大事な部下で、佐助君がお世話になっている先輩にあんなことしてしまうなんて申し訳ありませんでした」

??「……」


佐助君の先輩は何も言う気配がなかったので、一礼して土間に下りた。
作りかけだった昼食を仕上げ、器に盛り付けてお盆にのせていく。


(佐助君の先輩も食べるかな?)


そっと様子を伺ってみたけれど部屋の中に姿が見えない。


「あれ?謙信様、佐助君の先輩は?」


お盆を手に謙信様に寄る。


謙信「あれなら少し前に行ったぞ」

「全然気が付きませんでした。さすが本職の方ですね」


物音一つしなかった。
裏戸が開く音もしなかったのに、どうやって出て行ったのだろう?
感心しつつ謙信様の前に昼餉を並べていく。


謙信「そんなことより痛むところはないか?」



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