第78章 過去からの来訪者
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佐助「どういうことなんだろう。秀吉さんの家臣の人達がなんでこの時代に…」
怪我人を私の家に運び入れた後、佐助君に事情を説明した。
「ワームホールの予兆もなかったんでしょ?
昨日、天気が崩れた時間帯は私や子供達も寝ていたし…」
二人でうーんと首を捻った。
佐助「とにかくあの人達を港町に運ばなかったのは正解かもしれない。
10年のズレに気付けば、きっとパニックになるだろうから」
政の中枢から離れている蝦夷にさえ、秀吉さんが既に亡くなっているというのは周知の事実だ。
秀吉さんの命令で蝦夷に来たなんて言ったら港町の人は頭がおかしいと思うだろうし、家臣の人達にしても秀吉さんが既に死んでいるなんて聞いたら、逆上するなりして騒ぎになったはず。
「とにかく今は怪我を治してもらって、だね。
骨折してる人も居るけど、それ以外の人は少し休めば回復しそうだし」
佐助「うん、その間に俺も色々考えておくよ」
「ねえ、佐助君。ずっと気になっていたんだけど…」
佐助「どうしたの?」
「港町で私が人助けをしようとしたら時の神がそれを邪魔、って言ったら語弊があるかもしれないけど、阻止したじゃない?
それじゃあ、なんで一番最初、私と佐助君が信長様と謙信様を助けようとした時に、何もしてこなかったのかな。
後の出来事でもよくわからないことがいくつもあるの。時の神の動きに矛盾みたいなものがある気がして…」
歴史を正そうとするならば、もっと私達の行動を阻止しなければいけない場面はいくつもあった。
謙信様と私を出会わないようにする必要だってあったはず。