第78章 過去からの来訪者
(本当にこの人が秀吉さんの家臣だったら…)
本名を言わない方が良いかもしれない。
咄嗟に眩しく輝く朝日を見て、
「朝日と申します」
と偽名を使った。
男1「あんたにぴったりの名前だな」
そう言われ、胸がチクンと痛んだ。
「…太閤様が天下を治めていると聞きますが、蝦夷には詳しいことは伝わってきません。
太閤様はおいくつなんですか?お元気でいらっしゃいますか?」
ここが30年後の世だということは佐助君達が仕入れてきた情報で確かだ。
とにかくこの人から情報を集めたいと、さりげなく質問をした。
男の人が口にした秀吉さんの年齢と、病に伏しているという答えから予測すると、この人達は10年前、つまり秀吉さんの晩年に近い『時』からここに来たということになる。
(10年の時を越えてこの人達はここに居る。ワームホールが開いたのかな)
昨夜は酷い嵐だったし、時折雷の音も聞こえていた。
佐助君はワームホールの研究を続けていて、しばらくは予兆がみられないという話しだったけど…。
(だめだ、一人じゃ結論出ない。とにかく今は声をかけて回ろう)
それからは倒れている人達に出来る限りの手当てをしてまわった。
蘭丸君達が駆けつけ、港町に運ぶより私達が住んでいる里山の方が近いということでそちらに運び込むことになった。