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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第78章 過去からの来訪者


何も言わずに顕如さんの元を去ったのがずっと引っかかっていたに違いない。


蘭丸「でもね、顕如様は前を向いて歩き出していたんだ。俺が居なくなっても周りには門徒達もたくさんいたから大丈夫だと思うんだ。
 俺は俺で、顕如様に胸を張れるように生きていこうと思ってるよ」
 

(蘭丸君は強いなぁ…)


蘭丸君と同じ年だった頃の自分を比べると、もの凄くひらきがある。
なんとなく生きていた自分が恥ずかしい。

でもきっと「強いね」「凄いね」と言ったところで蘭丸君は『そんなことない』って言いそうだ。

言葉を選んでいると不意に蘭丸君が小さく叫んだ。


蘭丸「ねえ見て!舞様、砂浜に人が倒れてるっ!」

「え!?」


湿っぽい空気は吹き飛び、蘭丸君が指差す方向を見ると確かに人影がいくつか見えた。

まだ距離があるから生死はわからないけど、人影は全然動かない。


蘭丸「舞様、様子を見てくるから待っていてくれる?」

「わかった、気をつけてね」


蘭丸君はあっという間に駆けて行った。

何か争いごとで倒れているのか、事情が分からずソワソワと蘭丸君の帰りを待った。


――――
――


蘭丸「お待たせ」

「どうだった?」


蘭丸君は直ぐに戻ってきた。
結構な距離を往復したのに息ひとつ乱していないのは流石だ。


蘭丸「昨夜の嵐で船が遭難したみたいだ。砂浜に倒れていたのは六人。
 骨折している人も居る。とにかく声をかけても全然反応しないんだ。海を泳いできたから寒さで震えてるし…。
 俺一人で運ぶのは無理だから、皆に声をかけてくるよ。舞様は…」

「私は倒れている人のところにいるよ。簡単な手当てならできるし」


蘭丸君の顔が少し曇った。


蘭丸「大丈夫?まぁ、全員、虫の息だから舞様に何かするってことはないと思うけど…」

「大丈夫。でもなるべく早く帰ってきてね?」

蘭丸「うん、わかった。佐助殿の催涙効果のある煙玉は持ってるよね?
 何かあったら使って。煙が上がれば俺と佐助殿が気付くから」

「わかった」


蘭丸君は家の方へ向かい、私はお腹に手をあてながら砂浜に向かった。


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