第77章 聖なる夜は騒がしく
かまくらの外は極寒の世界。
銀世界の静かな聖夜。
(皆と過ごすここだけが、明るくて暖かくて特別な場所みたい)
蝋燭の光に照らされた皆の表情は、終始穏やかで温かい。
武将としての厳しい顔は影をひそめ、ひとりの人としてこの暮らしを楽しんで生きている。
そんなふうに見えた。
志を持って生きていた人達がこの地でどうやって生きて行けばいいのか、ここに連れてきてしまった私は悩むこともあった。
でもこうして皆の顔を見ていると、その想いが少し薄れる気がした。
(皆と一緒に過ごせて幸せ。謙信様……大好き)
咄嗟に守ってくれた力強い腕と硬い胸板の感触を思い出して、胸がまたキュンとした。
謙信様の必死の攻防を尻目に、まとまらない頭で美味しいお酒を楽しんだ。
小さなかまくらの蝋燭がぽつ、ぽつと消えていく。
静かなはずの聖夜は賑やかに更けていった。