第77章 聖なる夜は騒がしく
謙信「ほお?この俺の目の前で、他の男の着物に手を差し入れ、肌に触れようとしているのか?」
ぎくりと動きを止めて振り返ると、背後から覆いかぶさるようにして、すぐ近くに謙信様の顔があった。
(わ~~!ひゃ~~~~~~!)
不意打ちで綺麗な顔を間近で見てしまって胸の内で絶叫する。
信長様達からは謙信様の動きが見えていて、意地悪な笑いを浮かべながらお酒を飲んでいる。
光秀さんなんか『あと少しだった』とまで言って、着物を戻してきゅーすけに手を添えている。
(くぅぅ!二人とも意地悪!!)
「あのっ、着物の中にきゅーすけが居て、さっき引っ搔かれたと聞いたので傷を見せてもらおうとしただけなんです」
凄みのある綺麗な笑みが口元に浮かび上がった。
謙信「明智が猫に引っかかれただけでどうこうなると思っているのか?舐めておけば治る」
「いえ、れっきとした猫ひっかき病っていう病気があるんですよ!」
信長「なんだそのふざけた名の病は」
「えっと……」
謙信「佐助、猫ひっかき病の説明を信長にしろ。
舞は俺の隣に戻ってこい」
違う机に座っていた佐助君に説明係を押し付けて戻ってこいと言う。
「ええ?すっごい中途半端な……」
謙信「クリスマスなのに傍に居てくれないのか?」
寂しさを漂わせた視線と殺し文句に叶うはずがない。
「は、はい。わかりました。今すぐに!!
信長様、光秀さん、失礼しますね」
二人はおかしそうに肩を震わせ『いけ』と視線で促してくれた。
いつもこんな感じなので二人とゆっくりお話する機会が少ない。